第七十九章 ああ、八月三十一日のように。

第五六〇回 ルーティンには、まだ遠くて。


 ――それは日常? 或いは学園生活も含めて? 静かなる激動ともいえるの。



 今年はこんな感じで下半期を迎える。


 中等部三年生の一年間も、もう折り返し地点だね。


 今日は二十五日、八月の。夏休みの、変則的な最終日となったの。明日から二学期で気を引き締めなければいけないのだけど、その実感にはまだ程遠いの。



 穏やかな午前の風。イメージカラーは青色。僕はお部屋の中で執筆に励むの。隣のお部屋では梨花りかが、新作に取り掛かっている。僕のアイディアを元に描かれている。


 そして梨花には話してない、その新作に隠されたメッセージ……


 ネタバレしないようにするなら、環境問題が大いに関わるの。そしてそのあとは、まだ語ることができない。それは梨花が、最後に飾ることだからだ。


 風に誘われる僕……


「ちょっと出掛ける」と、梨花に告げて玄関を出て歩みゆくの。


 猛暑とは違う感覚。蝉時雨も、もう過ぎ去った季節の中へと。……されど着ているものは夏仕様。黒と黄のハーモニ―奏でるお帽子と、タイガーのイラストが豪快に描かれている大き目のTシャツ。ショートパンツ。スラッと伸びる脚にアクセントをつけるから。


 地を踏むのはスニーカ。素足に直接。それが、いつもの僕のスタイルだから。


千佳ちか」と、呼び止められる。


 ちょうどコンビニの前なの。そのコンビニは、シャルロットさんが今日もアルバイトに精を出している。缶コーヒーを購入しに入ろうとしたら、僕の名が呼ばれたの。


 その呼んだ相手はというと、……「太郎たろう君」だったの。でも、コンビニなら太郎君のお家の近くにもあるし、わざわざここまで? ――なら、


「太郎君はどっち? ここのコンビニの子に会いにきたの? それとも僕?」


「そりゃあもちろん、お前だよ、千佳。明日から学校だしな」……と、そう言ったの。



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