第五五九回 真夏の雨は、もう秋を告げる調べなの。


 ――その前に、皆が集うの。


 僕と可奈かな、朝の光の中での、二人だけの露天風呂にも、皆が集ってくるの。



 それはもう、ボッチとは無縁な、世界観となる。


 やはり人は密になりたがる性質があるようなの。されど屋外。お空の下で、湯煙が飛沫をガードしていると思われる。それに全裸だから、即洗い流すこともできて、意外ながらも、感染対策が成されており、スーパー銭湯で感染という試しはないと思われるの。


 いや、聞いたことがないの。


 なら、日々野ひびの家の大きな御風呂も、例外ではなく同じことがいえる。されど、その舞台裏にいる人たちのことを忘れてはいけない。スーパー銭湯でいうなら、その施設の従業員さんたちの、細心の注意を怠らないお仕事の数々を。僕らは感謝の思いだ。



 だから意図も簡単に、お店を臨時休業にしないでほしい。


 経営者も、従業員も、明日を生きるため必死なのだから、感染者を出さないように一丸となって必死なのだから、安易な緊急事態宣言の条件を……よく見極めてほしいの。


 今はまだ、八月も二十四日。

 真夏の内に入るから、この雨は、真夏の眩暈と思える雨。


 本当なら毎日恒例のふるさと祭りがあって、中止と思われていた修学旅行も、二十六日から行く先を広島へ変えて再度予定が企てられたのだけど、先生たちと生徒たちの熱い思いも虚しく、爆発的な感染拡大となって延期となる……少なくとも九月中旬、或いは十月となりそうな予測が立てられる。だけれども、予想外な出来事は日常茶飯事だから。


 そして代わりに新学期が、九月を待たずに開始されるの。


 だから今この時が輝ける、早朝の白い世界を。僕も可奈も、梨花りかせつもシャルロットさんも皆、集うの全裸で。ありのままの裸の付き合い。親睦を深めるためには、裏も表もない被うものもないからこそ、それが一番。だから修学旅行にも御風呂があると思えるの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る