第五五六回 脳内までも、真っ白になったその瞬間。


 ――それは可奈かなの質問。でも、その本質は僕自身の中にも。もしかすると、僕だけではなくて、皆が共通の、妹がもつ疑問……男性なら弟さんも抱えるテーマともいえるの。



 なら、そうだね。


「あるよ、いっぱい。梨花りかは僕が妹とわかってから、上から目線で調子に乗って、偉そうにするの。この間も夏休みの宿題のことで、喧嘩しちゃって……」


「だから、太郎たろう君と一緒に?」


「うん。僕のことほっといて、梨花は一人でサッサと、やっちゃうもんだから。教えてほしいこともあったのに、『そんなこともわからないの?』って、顔しちゃってさ」


「……千佳、あんたも色々抱えてるのね。梨花がそう言ったの?」


「ううん、わかっちゃうの。表情で……」


「なるほどね。……私も、お姉ちゃんみたいな優等生になれなくて、ヴァイオリンだけでも勝ちたいと思って練習して、お稽古以外でも、ずっと……でもね、いつもコンクールでは、お姉ちゃんが優勝で、私が準優勝、それ以下なの。それでもって、お姉ちゃんは優越感に浸って、『私は可奈よりも上なの』って、顔しちゃって……」


 その瞬間だ!


 このお部屋が、パッと明るくなった。


 ――バフッ!


 と、字幕まで出そうなほどにまで、目の当たりは一瞬暗く、すぐさま明るくなって、


「って、何するの、梨花!

 脳震盪起こしたらどうするの?」


 顔面直撃。僕は上半身を起こしていたから、ポロリと、顔から枕が落ちてきたから、明らかに梨花が投げたものだから、僕は反撃に移るために立ち上がって颯爽と投げるの。


 その枕を! 今度は梨花の顔面を直撃。僕と同じようにポロリと枕が落ちて、赤くなった顔を晒しながら「やったな、千佳! 思ったより元気そうじゃないの」と、言うのだ。

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