第五五四回 負けない設備も、再現性はバッチリで。


 ――それは大きな御風呂。それも何種類も。スーパー銭湯を思わせる程に。



 僕は歩く、颯爽と裸になって掛湯もして、その前に水分補給も充分にして、お外の風も気持ちよく、お空には丸いお月様。草木が靡く風景の中に露天風呂があるの。


 岩風呂に、炭酸風呂。その他諸々と。


 両手で頬っぺたを押さえるほどに、嬉しさ満開で……すると、せつは言うの。


「チカチカ、そんなにセカセカしなくても、御風呂は逃げないから」


「まずはサウナ。いい檜の香りだね、摂」


 という具合に、噛み合わない会話。嬉しさが先走りとなって……すると、今度はシャルロットさんがね、「千佳ちかさん、私とサウナしませんか? 洗いっこも一緒に」


 そうなの。目の当たりには、裸のシャルロットさんがいるの。……って、それそそうだね、御風呂なんだし。でもね、大人なの。僕の裸体と違って。僕はまだ子供。


 ……「いいですよ」と、僕は返したの。


 ところで、姿が見えないの。「先に行っといで」と、言ってはいたけれど。



「摂、梨花りか可奈かな、どうしちゃったのかな?」


 と、訊いたの。またまた二人だけの秘密なのだろうか? 摂までも外して。


「大丈夫、あの二人なら。

 可奈のヴァイオリンのことで、梨花はね、彼女の胸に秘めていた痕を、ただ聞いてあげているようだから。……普通に振る舞ってあげてね、いつものチカチカでね」


「う、うん」


 きっと僕の知らない可奈のその事情は、摂が知っていることらしい。……演奏が終わってから可奈、何だか泣いていたようだし。梨花は、そんな可奈の傍に寄り添ったまま。


「さあ、チカチカ、満喫だよ満喫。シャルロットだけじゃなく私も、あなたのことピカピカに洗ってあげるからね。そうすれば可奈も元気になるからね」と、言うのだ、摂は。



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