第五五二回 続々と模擬教習。摂の企てた本質とは。


 ――繰り出される習い事の数々。


 茶道に、華道に、書道と……まだほんの一部だって言うの。



「この後まだね、社交ダンスも熟すし、バレエも、それにピアノも……」


 って、まだあるの?

 サーッと、戦慄にも似た感覚が走った。


「ピアノは私。せつはヴァイオリンでしょ。……でも、コンクール中止になって、ホント残念だった。せっかくあの子の、キミオ・スズキのピアノ、聴けると楽しみだったのにね」


「そうね、ウメチカ・ピアノコンクール。シャルロットも出場者だったものね。遥々異国の地から、留学までして。主催者側に感染者が出たということで、本当に、本当に……」


 摂のその言葉に、重みを感じるの。まるで我がことのように。



 事の重大さ。――決して軽はずみでは許されないことだ。コンテストを催すのであるのなら、そのことを肝に銘じて開催してほしい。中にはシャルロットさんのように、訳ありでありながらもエントリーする人だっているのだから。その現実をも見てほしい。


 広がる視野。


 グローバル化を目論む内容。摂の企てた本質は、ウメチカ・ファイブの活動にも通づる内容。僕らが思っている以上に、規模の大きい内容なのだ。そのことが犇々ひしひしと伝わる、この度の模擬教習。そこで鳴り響く重厚感あふれる鐘の音……このお家ならではの、


 大いなる門構えの玄関から奏でるチャイム。


 訪問者の存在を意味している。防犯カメラも完備、モニターも。映し出された人物、その人物とは、まず女性なの。それも僕と同い年の、梨花りかとも摂とも。同級生なの。


「相変わらず広いねえ、あんたのお家」


 と、第一声はその一言から。……「可奈かな、来てくれたのね」と、摂は本当に嬉しそうな表情で迎え入れる。それほどに可奈は、この模擬教習に於いての、重要人物なの?



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