第五五一回 そして模擬教習。初めての試みだから。


 ――本題に入るテラスの午後三時。と言いたいところだけれど、あくまで和風。



 畳と、障子の世界が広がっていた。飲食するものは抹茶で。


「お見事」と、せつが褒めてくれるの。……座る姿勢は正座で、回す器は三回転。苦いという感想は、それもまた誉め言葉。美味びみしい御茶を振る舞えたという証拠だそうだ。



 本来ならば和の儀式なだけに、着物が相応しいのだけれど、


 この頃から、また猛暑が繰り返されて、お外は三十度を超える炎天下。二十四時間テレビのTシャツが礼服の役割を果たしていた。桃色で統一されている。摂は何着か持っている……それどころか、スポンサーとの関わりがあるそうなの。その頃から、シャルロットさんと親しくなった。そのお付き合いは凡そ三年前から……


 愛は世界を救う。そのことがキッカケで貿易繋がりの摂のパパと、シャルロットさんの御父様が付き合うようになった。公私ともにとの関係で。八月になると、家族でこちらに来られる……そこまでの情報を、僕は、摂のママから得ることができた。



 思えば、同級生のママとは、いつも僕は仲良くなれるのだけれど……


 そのことについて、梨花りかは言うのだけれど、「それは千佳ちかが可愛く見えるから。……何というのかな? おば様たちに愛されるキャラと言うのか……だね」って、それって、まるで僕が子供っぽいってことじゃない。すると反撃なの、僕は梨花に鏡を見せた。


 比較してみてって言わんばかりに。


 ……納得。したようだ梨花は。何処をどう見ても、僕と同じく子供っぽいから。


 だからかな? シャルロットさんが羨ましく見えるの。……その、大人の魅力というのか、お茶を振る舞う仕草も素敵に思えるの。学びたいの。僕にも大人の魅力が。ライバルは梨花。――ここから先の模擬講習は、まだ摂の習い事による『習い事の体験版』というのだろうか、それこそが摂の企てのようだ。決して遊びではなく学びの世界なの。



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