第五五〇回 ――シャルロットお姉様の登場だから。


 ……二十六世と名乗る程だから、


 とある異国の由緒ある貴族の娘と思われるのだけれど、本当にそのようなの。



 プリンセス、と言っても過言ではない程の身分。だけれど、お忍びだそうだ。とっても訳ありなような趣。せつも、あまり詳しくは教えてもらえてないそうなの。パパからもママからも、それに本人からも。或いは本人も、詳しい事情は知らないのかもしれない。


 何故、日本へ来訪したのか?


 また、日々野ひびの家の来訪者となったのか? ……御歳は十六歳。髪は栗色で摂と同じくらいに長く、瞳は青く色白。身長は僕らよりも十センチほど高く、大人って感じなの。


 ――それに、


 コンビニエンスストアーで、出会った僕のことを思い出したようで、


「あの時のジョギング少女? あれれ? 二人? マジカル? コミカル?」という具合に、久しぶりに見たリアクション。……僕と梨花りかが並ぶと、まるで分身の術のような、そんな感じにでも見えるのかな? ということで、摂が説明する。日本語は理解できているそうだ。発音の違和感は多少あるけれど、日本語の御上手な異国の人という感じだ。


 摂は、彼女のことを「シャルロット」と呼んでいる。


 今度は僕らが、自己紹介を試みる場面へ。右から順に……って、あっ、僕からだ。


「僕は千佳ちか……

 星野ほしの千佳です。あの、シャーロックスタ……」


「シャルロットでいいですよ。えっと、チ、千佳さん、摂にそう呼ばれてますし、私の名前は長いですから。私もですね、このニックネーム気に入っているのですよ」


 ご機嫌麗しゅう、満面な笑顔のシャルロットさん。気品高い仕草。そしてお次は、僕の横に控えている梨花の番。颯爽と始める自己紹介で――「この子の、双子の姉の星野梨花です。以後、お見知り置きを」と、そんな具合に、いつもとは異なる空気となった。


 そして、ここから始まる模擬教習。何もかもが初めての試みで、新鮮なものへと。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る