第五四八回 その当日は、静かなる朝から始まった。


 ――まだ白いお空に、薄っすらと月が見える頃、僕は走り駆け抜けるの。



 今はもう見慣れた景色の、向日葵の行列。金太郎飴のように長く続くの。

 そして脳裏を掠める、食という欲……



 立ち止まるも、車と同じ原理で急に止まることができない。止まるにも、助走が必要なのだ。或いは僅かなる惰性。ある程度のゆとりは健康のためにも必要なの。


 高鳴る鼓動と速まる呼吸も、鎮めるのに。心の臓の負荷を和らげるため、それからマスクを着用して店内に入る。コンビニエンスストアの中へ。……二十四時間テレビを彷彿とさせる黄色のTシャツは、実は二十四時間テレビのもの。去年、太郎たろう君と一緒に購入したものだ。僕が黄色ならば、太郎君は緑色。梨花りかには桃色をプレゼントした。



 店内の冷房は、少し寒いほど。


 でも、まだ心地よいほど。半信半疑であるかどうか探す金太郎飴。……まあ、ないだろうと思いつつも、な、何と、合ったのだ。ホクホクと温まる懐、或いは胸。


 レジの女の子は、高校生くらいかな?


 年齢の近さを感じる。アルバイトの青春も……と思いつつも、僕にはまだ大人の世界だろうか? 思えば来年、僕も高等部に進学する。その大人の世界まで近く。


 でも今は、まだ子供でいたく、


 修学旅行も満喫したい。今日はその模擬教習の日。そのおやつに金太郎飴を購入したのだ、四本ほど。ついでにポカリスエットも嗜む。乾いた喉や、熱中症対策における水分補給を思うなら、そちらがメインとなる。そして摂取する水分。


 レジの女の子は、僕に笑顔を向ける。……はて? 何処かで会ったことのある子だろうか? 背中までの長い髪に、白く綺麗な顔。「頑張って」と声援をくれた。


 その瞳は青く……異国の人かな? と思えるほど。その面影を残しつつ。



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