第五四五回 喩えるなら、少し未来のこと。


 ――その幸せについて。きっと、計り知れないと思えてきたの。



 爆発的な感染拡大の向こうにあるものは、COV収束の道程からの、ごく普通に行おうと思っていた生活。何も規制されない学園の行事と、これまで知ることのなかった体験。



 ……全力で、


 これからの学園生活を楽しもうと思っている。中等部生活は、あと半年だけれど、高等部生活は三年。梨花りか可奈かなは勿論のこと。太郎たろう君とせつも交えて、エンジョイだ。そんな境涯に、僕は昔から憧れていたの、あの『マーマレード』で連載されていた少女漫画のように。特別ではない一少女の青春グラフィティを。



 僕らの先輩たちも、きっとそうして卒業した。

 ……して行ったの。だから、皆が楽しそうな顔をしている。


 そして今も、僕は夏休みの宿題に勤しんでいる。今度は太郎君が、僕のお家を訪ねてきた。この間のお返しということらしいの。でも、思えば密のように思える。僕と太郎君の距離。ここでならマスクの着用もなしで……時折、いいのかな? とも思えてくる。


千佳ちかとはもう、家族みたいなものだから」


 と、突然言うの。思っていたことが思っていたことだけに、


 ボン!


 と、脳内で激しき爆発。そして顔からは火が出そうにもなった。


「ちょ、ちょっと、僕らまだ中学生で……」


「家族に年齢は関係ないし、同じように恋愛も年齢は関係なしだ。いつ千佳に俺との

子供ができたとしても、俺はいつも覚悟を決めている。その子のパパになる心の準備はな」


 ……って、太郎君の顔、怖いくらいに真剣なの。


「だったら、試してみる? 僕は太郎君と一緒なら……約束してくれるかな?」

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