第七十六章 十三日の金曜日の、その後にある出来事について。

第五三九回 喩えるなら、お盆にあること。


 ――お墓参り。そこは僕らが泳いだ海に近い場所。真の目的はそこだ。



 そのお墓にはもう、旧一もとかずおじちゃんはいない。……きっと旧一おじちゃんのパパも。つまり僕と梨花りか、それに可奈かなも、共通のお祖父ちゃん。二人はきっと、もう来世だから、


 ならば、この地にあるものは二人の墓標。


 埋葬された遺骨。……でも、魂は未来永劫。過去・現在・未来が永遠のルーティンとなるの。人として生まれることも稀のようだけれど、僕らは人として生まれてきたから、


 不思議な縁なの。梨花の双子の妹であることも、お母さんの娘であることも、パパの娘であることさえも、ママと一緒に暮らしていることも含めて、お祖母ちゃんの孫であることも。……生きていることは、それ自体が深い意味の集大成。



 旧一おじちゃんの、それがメッセージだったの。


 僕が手首を切って病院に運ばれた日、梨花に叩かれた頬の痛さは今も覚えている。忘れられない痛み。……僕よりも泣き顔だった梨花のエッセイを、僕は泣きながら読んだ日の夕映えは、僕の心を熱くした。その日からだ、僕のエッセイが始まりを奏でたのは。


 ふと落ちる涙は、生きている証。

 込み上げる想い。生きている証だ、それさえも。


 死にたくないと思うのも、生きたいという思い。生きているということが、これほど大いなることで、これほど感動することは、広大なる海に値する。人類の祖先は海から誕生したのだから、体内の水分のパーセンテージは、地球の割合と等しいから地球規模。


 命は、それほど重いのだ。


 僕は、葉月はづきちゃんからも、そのことを教わったから。


 僕は、僕の未来を生きる。そして十三日の金曜日の、その後にある出来事が、そのことを確認させた。僕と太郎たろう君の愛を確認するように……。この家族旅行から帰ったら、会う約束をしているの。そこからは太郎君との受験勉強の再開となるのだから。



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