第五三五回 ――八月九日。三連休と称したの。


 カレンダーの祝日は十一日……


 でも、七月の四連休もそうだったけれど、カレンダーの記載が間に合わなかった国の定めた休日。そのため暗黙の祝日となったの。僕も初めて知った、この度の八月の三連休。



 七日、八日、九日……


 心境的には、藪からスティックのように意表を突かれた感覚。そして更なるサプライズと講ずるパパ。それは旅行、小旅行、プチ旅行……いずれも当て嵌まるようなの。


 そして、とある人脈からレンタルしたそうだ。


 黄色と黒のカラーリング眩いキャンピングカー。ニシハラ号と塗装が施されているの。


 僕と梨花りかは昨日から夏休の宿題に奔走するも、昨日は昨日でお母さんからのサプライズな花火大会。それに続いて今日はパパからのサプライズ。……プチ家族旅行なの。


 でも、不要不急の外出はしないで下さいと……


 しかも今は、四連休を皮切りに感染拡大と……オリンピックも開催して賛否両論があったそうだから。それに里帰りも、県を超える移動は禁止とも言われているし……



 でも、パパは言うの。


「県は超えないし、外出自粛だからこそのキャンピングカーだから。移動するお家と考えるのなら問題なしだし、行ってもそこは広場で密にはならないから」……という具合に理屈に理屈を重ねる始末。そんなパパを見て、何か可愛らしく思えて、狼煙も高く「レッツゴープチ旅行」と掛け声も高らかに、僕らは舞い上がる。全員で出発だ。この日は台風九号が本州を通過するのだけれど、僕らの地域は大雨が朝まで待てずで、残りの突風も午前中で、ほぼ整理された。だから、人は前向きになると強い。


 如何なる悪条件をも、善の知識へと変えてゆく。ならば、楽しいことを我慢することはない。――前向きならば知恵も沸くのだ。拙い知恵をも、もしかしたら大いなる閃きなのかもしれない。きっとパパは、僕らにそう教えたかったのかもしれないと、そう思うの。



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