第五三〇回 爆発! ビッグバンの果てに。


 ――砂塵舞い上がる風景、画面狭しといっぱいいっぱいに広がる様。



 収まる頃に勝負……


 タロのHPヒットポイントは、まだ僅かばかりだけれど残っている。操縦席ともいえるゲーム機の前では太郎たろう君のお傍。僕は太郎君の笑みを見た。画面に集中する太郎君に。


 対峙した場所の、対面する怜央れお君と……


 その御隣にはね、葉月はづきちゃん。僕と同じだ。その様子だとレオもまたHPが残っているようだ。相手の情報はね、画面には表示されない仕掛けとなっていた、今更ながら……


 そして遂に、その時来たる。


 砂塵が晴れる頃、ボロボロになったタロとレオの姿が確認できた。そこにはもう、大技は存在しない。両者ともエネルギーが僅かと思われるから、只管に格闘の基本に立ち返りパンチとキックの猛攻。でも、スローというか、気力だけに近し。するとふと、タロのパンチが空振り……レオの角が、タロの胸を突き刺さった。


「えっ……?」と、太郎君から漏れる声。驚愕の声……


 まさかの、まさかのHPがゼロ。タロは崩れ落ちるの。胸のカプセル状の……カラーシグナルは赤点滅を辞めてしまった。タロはもう、起き上がらなかった。


 僕はじっと見るの、太郎君のこと。……そこにはね、

 落ちる涙ではなく、清々しい顔で、


 怜央君と葉月ちゃんと対峙する場所……怜央君に向けての顔だったのか?


「強くなったな」

 と、静かなるその言葉が、太郎君の心情を語っていたような気がする。僕にはそう思えたの……。それはまた僕の知らない太郎君と、怜央君の関係。師弟というもの。


 こうして幕は下りる……


 長きに渡った戦いに。そう思った時だ、やはりこれはウメチカ戦、静かな終わり方などないのだ。手を差し伸べる怜央君に、太郎君はその手を握る。大団円が始まるのだ。



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