第五二六回 それは、次なる対戦相手なの。


 ――決勝戦!


 と、呼ぶにはまだ一日ほど早く、四連休も後半に差し掛かったばかりだから。



 その相手とは、奈々ななさん……率いるチーム。その首謀者は可奈かなだそうだ。先程は会場の片隅で奈々さんと出くわして細やかな会話……そこに可奈が乱入して、それでもって可奈自身のマシンガントークが災いして、自ら暴露してしまったのだ。


 次なる対戦相手は、自分たちだと。


 極秘裏なチーム設定までも、うっかり口が滑ったそうだ。可奈がリーダーの葉月はづきちゃんがそのサポート役。プレイヤーは怜央れお君と奈々さんという異色なチームだ。そしてチーム名は、さっきも言った通り『異色』というのが名前のチームなの。



 今年、初登場。……しかし、僕らと今この場で試合をするということは、ここまで勝ち抜いてきたということになる。少なくとも、簡単に勝てる相手なんて全然いなかった。


 寧ろ強豪チームの集いとも思えて……


 僕らがここまで勝ち進んできたのも、正直に言えば奇跡とも思える程だ。


 ……なら、車夫しゃふさんと野口のぐちとしさんのチームよりも強いのかもしれないという、これまで経験したことのない苦戦を強いられそうだ。……でも、それでもね、何だろう? この感覚は? 脚が竦みそうなのに、何でかワクワクにも似た感情が込み上げてくるの。笑えるの。理由はわからないけれど、笑えてくるの、嬉々とした感じなの。


 ――そして始まるの。


 決勝戦の風格を持つ、準決勝戦が。


 異色なチームとの対戦。異色なだけに予測不能……巨人が現れた。画面に赤い巨人が仁王立ちしているの。それに乗じて試みる。僕のアバターの巨大化を。


 地球の変化に対応するため、進化を続ける生物のように、僕のアバターも進化を続けるようなの。それが僕のアバターに秘められた設定。今はもう我が手となったのだ。



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