第五一二回 令和三年七月十九日のこと。


 ――今年のカレンダーは祝日となっているけど、静かな……登校日だったの。



 令和三年七月十九日。本来なら今日が祝日だった。そして第二次ウメチカ戦も、最終日の予定だった。しかしながら祝日は動いていた。オリンピック開催に合わせて……その説が浮上したの。但し無観客。蔓延防止の最中だ。僕らの住んでいる場所は、そうなのだけれど、肝心な開催場所の東の都では、新型ウイルスによる感染拡大で四度の緊急事態宣言を招いていた。……晴れない日々は続くけれど、


 明けない夜がないように、弾む笑顔はマスクで覆われたとしても、必ず蘇る。

 僕はそう信じている。


 早朝にも拘らず、歓声たる蝉時雨。やっぱり賑やかなのが大好き。



 オリンピックに習って、第二次ウメチカ戦の開催も二十二日から二十五日までと日数も倍に拡大した。テーマは弾む笑顔だ。……最近、怒りっぽくなった梨花りかにも笑顔。今も継続しているの。僕の傍にある梨花の顔……同じお布団の中で眠っていた。


 きっとバンプラを楽しめた証拠。スヤスヤと寝息を立てながら、満足した様子。僕も楽しめた。せつ太郎たろう君もいて、本当に楽しかった。


 ウメチカ戦は、開催する前も楽しめるという醍醐味があったの。そしてバンプラも完成して二体、机の上に飾られている。体育座りをしたクマさんのようなMSと、美しき紅い光沢感をもつ西洋の騎士のようなMSが並んでこちらを見ている。


 僕は可愛い系と、梨花はカッコイイ系。……やっぱり好みは違うみたいだけれど、何よりも楽しめたのなら、それが一番。皆で取り組んだ時、皆が楽しく笑顔になれたの。


 まるで綴られるスクラップブックのように……


 あっ、思い出した! 僕が大好きだった少女漫画のタイトルだよ、それ。そして作者のお名前も一緒に。――感極まるの! 弾むのは笑顔だけではなく涙までも。それができたのも梨花のおかげ。梨花の笑顔が素敵だったからなの。



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