第五〇九回 思えば、僕たちの出会いも。


 ――重なる場面と、繰り返す思い出。



 それはゲームから。正確に言えば再会なのだけれど、サヨナラも告げずに凍っていただけで、過去は脳内で解凍され、その想い出は繰り返されると、……そう思っていたの。


 でも想い出は、未来を創る。


 縁という形となって、こうして今も、太郎たろう君の傍にいる。あの頃よりも、きっと崩れない絆。もう身も心もどちらでも、固く結ばれた絆だから……


 だから、ギュッと寄り添うの。「もう離れないでね」との、唐突な言葉を奏でながら。


「当たり前だろ、ずっと俺の傍にいろよな、千佳ちか


「えへへ……」――そんな唐突な言葉に対しても、太郎君は、真面目に答えてくれたの。


 真剣な愛。だから浴室の中での出来事を、しかと梨花りかに見られたけれど悔やまないの。


 胸を張って堂々と……と、丁度そう思ったタイミングだ。


 ビッグで黄色なTシャツを着た梨花が、ガラッと音を立てながら、このお部屋に入ってきた。少しばかり頬を赤らめながらも、目が泳いでいながらも来訪……訪ねてきた。


「二人とも、良かったらでいいんだけど、

 手伝ってほしいのバンプラ。……あの、その、交換条件でお願い……します」


 交換条件とは、つまりは口止め。


 先程の浴室内での出来事を、梨花の胸の中だけに留めてくれるってことの証。僕と梨花だけにわかるアイコンタクト。なら、僕の選択肢は唯一つのみ。


「させて頂きます」との一言に尽きる。太郎君も同意……暗黙の了解下での顔。コンテストまでに期間が厳しそうなの。このあとせつも御越しになられる予定だけれど、生憎の大雨だから今日は厳しそう。お母様から止められたそうだ。明日以降となる。


 その前に結果は引き分け。ウルトラ・タロとウルトラ・レオの対戦は。勝負がつかないままカラータイマーの赤点滅が止まり、両者があの独特な効果音を立てながら倒れた。


 そして『GAMEOVER』との文字が、画面に大きく描かれているの、今も……



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