第五〇八回 淡く、トキメキの室内から。


 ――そこからはもう二人の時間だった。お部屋の中で起動するPS4・5。



 さっきまでは、もしもパパが帰って来たなら……もう大変な内容。だから、浴室で行ったことは洗いっこと察してほしい。実のところ梨花りかもずぶ濡れで帰って来たから、浴室でバッタリと……知っちゃって。知っちゃったから「見なかったことにしてあげるから」


 その一言を残し、今はもう僕らは先に出て……もちろん浴室を。


 梨花は一人でシャワーをしている。梨花が見て知っちゃったことは、僕と太郎たろう君が一緒に裸で……いる現場。それ以上のことは言えず、とても気まずい空気を漂わせたから。


 まっ、してしまったことは仕方がない。


 切り替えが必要だ。今は画面に集中する。すると颯爽たる画面の変化。昨日と同じ状況となる。「レオ!」との叫び声とともに、赤い巨人が登場したの。


千佳ちか、こいつか昨日の奴って」


「うん」


 太郎君は僕に確認するなり、煌めく胸のバッジを掲げて「タロ!」と叫ぶ。それはまた画面上にも反映され……アバターとの一体感を目の当たりにした。


 聳え立つ二体の、それも光の国からお越しになられた趣の巨人が対峙する。その名はレオとタロ。どちらも巨人だから縮小の必要もなく、高層ビルを舞台に激闘を繰り広げる。


 二体の巨人には、信号機ともいえる胸に輝くカプセル状のものがある。それは制限時間を示すもので、青から赤点滅となる。タロのスワンキックとレオのレオキックが炸裂、どちらも譲らない勝負。光線技も空中で破裂する程、互角の攻撃が展開された。


 ……するとね、太郎君が笑っているの。


「よくここまで成長したものだ……」と。なら、この画面の向こう側にいる人物を知っているようだ。僕の勘が正しかったら、きっと……「そう、千佳が思ってる通りだ。ウルトラ・レオの正体」と、太郎君は囁くの。小さな声だけれどもハッキリと。なぜなら、ネーミングセンスが太郎君と酷似している。それが大きな理由となったから。



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