第七十二章 ――見上げてごらん。

第五〇六回 今日、七月十三日のお空を。


 令和三年の七月十三日は、火曜日だった。


 しかしながら、やはり十三日。何かが変わっていた。例えばお空。夜のお空……



 三日月に近いのだけれど、やはりバナナ型に見える。少しばかり紅の色。……そして起きたのだ。何かが。何かといえば、お部屋の中で……PS4・5の立ち上げその中で、空気とともに画面が変わった。――レオ! という叫び声とともに、赤い巨人が現れた。


 ウメチカ戦を想定したゲーム画面だ。


 進撃するその巨人の名は、ウルトラ・レオ。僕のアバターの十倍……いや、まだその何倍かは大きい。まるで太郎君のアバター、ウルトラ・タロが巨大化した時と同じ位だ。


 つまりは、どちらも赤い巨人。

 あの遠い星から来た、伝説のヒーローような風貌。


 ――戦う。僕の魔法少女のような趣のアバターと。先日、車夫しゃふさんのアバターに切断された胴体も、すっかり完治もして挑む。ここは平等にということで、巨人は縮小して、大人と子供の身長差ほどにまで……繰り広げられる光線技と思いきや、レオキックという必殺技で瞬殺された。赤く光る右足に、僕のアバターの首が切断されたの。


 宙を舞う頭部……


 強敵は、ここにも現れる。この度の『第二次ウメチカ戦』に出るのだろうか? そんな予感を漂わせながらも、確かなる戦慄を残してスーッと画面から消えた。


 僕は……僕の脳内は真っ白に。


 気付けばスマホを手に取って、コールコール……コーリング。その果てに「夜分遅くにすみません」と冒頭に、僕は言うの。「明日、お家に来てほしい」と。


 ――了解!


 との言葉を僕の脳内に残してから、穏やかな声で話す太郎君。どちらかというなら、今の出来事をお話するよりも、ただ太郎君の声が聞きたいというのが本音。明日も現れるかどうかもわからないウルトラ・レオよりも、太郎君と少しでも一緒にいたいから……



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