第五〇五回 鈴木君も、新世界へ。


 ……僕らの時間は、どうやら七夕で止まっていたようで、

 或いは、その余韻に浸って、まるで石鹸の残り香のように、心地よかったから……



 でも、気付けばもう、第二次ウメチカ戦が一週間と迫っていた。だからだったの。梨花りかせつが日の本橋に行こうって言ったのは。ウメチカ戦は去年と同様に、℮スポーツ部門とバンプラコンクールも兼ねていたからだ。本年は摂も加えてパワーアップ。二人タッグを組んで挑むそうだ。『りか&せつ』というのがコンビ名で……って、そのまんま。



 その二人に乗っかるように、公太君が合流。


 何でも去年、挑戦したそうなの。梨花が挑んだバンプラコンクールに。公太こうた君は「梨花先輩がライバル。それ以上でもなくそれ以下でもなく……ということは、梨花先輩を制して優勝することが目標だ。と、いうことでよろしくな、キング・オブ・キングス」


 その言葉からわかるように、

 去年の優勝者は梨花だ。℮スポーツ部門の僕と太郎君に並ぶ。


 そして鈴木すずき君が登場したのも、やはりそんな匂いがしたから。打倒・梨花を目指すために、公太君がコンビを組んでほしいと頼んだそうだ。……何を隠そう、公太君が初めて頭を下げてお願いした。何故そこまでしたのか? それだけ梨花が強敵ということ。それから鈴木君のお家の環境。彼はピアノコンクールを目指す多忙な身だから。


 お母さんのスパルタ教育の元、彼は……公太君とともにバンプラと出会った。そのスパルタ教育にウンザリする日々、その最中で出会えた最高の時間と、お友達……もう親友の域にまで到達している。その身の上話を知った時、摂は、


「私と、似てる」……そう漏らした。


 だからこそ、全力で勝負する。と、摂は言い放った。燃ゆる挑む戦いだ。


 ――鈴木公生きみお。な、何と同じ学園の生徒。身長は公太君よりも小さくて、百四十センチに満たない。お坊ちゃんのような風貌で黒縁眼鏡が特徴。趣味は「バンプラ」と答える。

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