第五〇四回 どちらも、新世界へ。


 ……お話する機会はあったの。



 思えば、僕らが此の地を訪れた目的。それはバンプラだけではなく、広くいうのであるなら、鉄道模型をも含んだ模型だけではないの。折角の関西屈指のマルチメディアの心臓部ということで、℮スポーツの最新情報も、第二次ウメチカ戦で使用されるソフトのバージョンというか、その性能も……少しばかり偵察の意味も込めながら。


 けれども暗黙の了解の中に、

 真の目的が含まれているのは世の常で、それは親睦。梨花りかせつはお馴染みのメンツだけれど、公太こうた君と……それに鈴木すずき君。梨花はどう親睦を深めるのか? 一番の見所。


 それは学校で学ぶことに通ずる。


 社会に出て何が、真に必要なのかを……きっと僕は、学園に来てわかったのだと思えるの。前の学校では、どうしてもわからなかったことで、どう質問していいのかも、遥か遠くにその答えはあるのかと思っていた。でも梨花は、僕のことを受け入れてくれた。摂も皆が皆、僕という存在を否定しなかったから。……だから学べたの。


 ある意味、学校は……


 社会の縮図ともいえる場所。そこにおける集団生活の中に、その答えはあるのだと思えるの。けれども人によって答えは異なる。多分、答えは多種多様……一つではないの。


 桜梅桃李。誰もがオンリーワンだから。



千佳ちか、どうしたの? お腹でも痛いの?」と、梨花が僕の顔を見て、


「あっ、何でもない。目にゴミが入っちゃって……」と、僕は慌てて涙を拭こうとしたらね、「ダメダメ、あまり擦っちゃ。目薬あるから」と、摂が目薬を点してくれたから、


 もう気分爽快。お店の中でスッキリした。その様を見て公太君が、鈴木君と顔を見合わせながら「千佳……あっ、千佳先輩、このあとゲームのフロアー行こうよ。俺たちもバンプラ決まったし、梨花先輩も日々野さんも決まったみたいだから」と、会心の笑顔だ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る