第五〇三回 お約束も、新世界へ。


 ……はて? お約束とは?



 それは店内で起きたこと。僕は見た、目の当たりにした。で、ウットリにも似た趣で、


「かわいい」


 と、声が漏れたのだ。それでもって何々と、梨花りかせつ公太こうた君まで……それと、知らない男の子まで、僕の傍へ寄ってきたの。――舞台は関西屈指のマルチメディアの心臓部ともいわれる日の本橋。僕らは今も此処に滞在していた。そして尚且つ店内……


 通り抜ける冷房の風が、マスクの息苦しさも抑えてくれていた。



 フォックスと呼ばれる店内。バンプラだけではなく様々なジャンルの模型専門店。鉄道模型のフロアーもあるけれど、お人形さんのフロアーもあるけれど、今はバンプラのフロアー。梨花の目的に合わせた。その中で僕が見入ってしまったの、パッケージの写真にある体育座りの……クマさんに似た可愛いロボット。で、とってもとっても欲しくなって、


「買っちゃいなよ、お姉ちゃん。

 買って後悔ない機体だから、僕も組んだことあるんだ、それ」


 と、僕の傍に寄ってきて、正確には公太君の傍にいた、その知らない男の子……見た目は公太君と同じ背丈で、眼鏡を掛けていて……「鈴木すずき君、もっと紹介してあげて、このお姉ちゃんに。俺も欲しくなっちゃったからさ」って、公太君が言ったの。



「じゃあ、君たち知り合いなの?」


 と、僕が訊く前に梨花が訊いたから……マジマジと、鈴木君というこの子が見るの、梨花と僕のこと。そのフォルムを焼き付けるように、そして驚きつつも「どっちがどっちなの? 今喋ったの?」と、鈴木君が言うから、公太君は「なっ、本当に似てるだろ? 俺もお気に入りがあるから、買ったらお前ん家に行くよ」と、満面な笑顔。


 ――と、いうことはだ、公太君と鈴木君はお友達? それも親しい仲。



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