第五〇二回 歩みゆく、新世界へ。


 ――でも、実際はその近くで、日の本橋。


 東の都にも同じ地名はあるが、ここはアキバにも劣らない程の……関西屈指のマルチメディアの心臓部。僕らは土曜日の風を道連れにして此の地を訪れた。



 ならば、このエピソードの主人公は梨花りか。僕も一緒にせつも一緒だ。緊急事態宣言が解けて蔓延防止となるも、まだ油断は許さない状況。……でも、一年以上も待ったのだ。


 この地にしかない、バンプラ専門店。


 梨花には特別な場所で……以前はよく、パパと一緒に来ていた思い出の場所も兼ねている。梨花が一番初めに此処を訪れた時は、まだ梨花が、関西人ではなかった頃……


 実は密かに、梨花は関東の人だったの。


 僕は生粋の、関西人。生まれも育ちも。しかしながら生まれた日も場所も、梨花とは同じで、元は同じ関西人。そんなことを思いながら、僕は歩く、足並みも揃えて。


 行き交う人も少な目……と思いきや、まあまあ多い。


 けれども、僕らの住む場所よりかは、取り締まりは厳しいようで、お酒を提供する飲食店など閉まっている所が多くて、静まり返っているに等しい状況で、寂しげだ。


 お空もまた、灰色。

 雨が時折降りそうな曇り空。


 しかし、それでも、梨花の笑顔は絶えない。それに同調して摂も。

 ……もうそこには、抜け駆けなど存在せず。もう百合でなくなったから……


 可奈だけではなく、梨花と摂も純粋な友人。百合から親友となったのだから。そして今は、僕ら三人だけが歩んではいない。もう一人いるのだ。公太こうた君もついてきた。


 ……なら、


 公太君が、僕らについてきたのは、バンプラが目的? ……初めて明かされることだったのだ。実は公太君もバンプラが大好きなの。梨花との趣味が合うとのことで、同調したの……だから大燥ぎなの、公太君。でも、梨花も一緒に大燥ぎ。同い年に見える程……



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