第五〇一回 世界観も、新世界へ。


 ――それは、未だ見ぬ世界観。


 いつの日かと……心の何処かで夢見ていた。その別名は『憧れ』とも言った。



 かつて見た……多分『マーマレード』という少女向けのコミック雑誌だったと思うけれど、そこに連載されていた漫画……が、大好きだったのを覚えている。今も憧れ……


 そのはずなのに、タイトルが脳の中で迷子になっているの。


 ……その著者も。でも、それでも僕に、多大な影響を与えたのは間違いなしだ。

 憧れの世界観。


 とある学園で繰り広げられる青春ものの奮闘記。主人公は美術部に所属している小柄で可愛い男の子……が、ある少女との出会ったことをキッカケに、恋愛へと発展したことから物語は始まる。主人公を取り巻く仲間たちの友情。時には喧嘩もするけど、共に悩み励まし合って、チームワークともいえる団結で、様々な課題を乗り越える世界観に……



 心が弾んだの。


 心に染みたの。

 連載されっていた時期は、一人ぼっちの頃。


 本屋さんで、毎月楽しみに立ち読みしたの。まだ小学生だったあの頃、漫画の中の主人公たちは中学生。今はもう……同じ中学生で、決して夢ではないの。


 その頃は夢で、遥かに遠い世界観。お家に帰っても一人ぼっちで、いじめられっ子の心には、心に染みるには充分な内容だったから。


 ……なら、今のこの状況は?


 夢なんかではなく、リアルな世界なの。


 思えばもう、あの頃の憧れの世界観は、僕の手の中へ。……そう自覚したのは、つい最近。昨日今日の話。ギュッと温かな温もりの中、涙した、昨日の帰り道の、お姫様抱っこしてくれた太郎たろう君の温かな胸の中。そして目の当たりの、出来事そのものだから。



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