第四九八回 思えばもう、七夕。


 ――と、いうことは、僕らのお誕生日。二人一緒に十五歳になるの。



 七夕は、七月七日だけれど……


 僕らの七夕は、去年から六日と、可奈かなが決めていた。だからその日の夜、催しごと……ではなく、イベントをすると言っていた。僕らのお誕生日に合わせたイベントなの。


 因みに今日は、もう七月六日。


 午前中に生まれた子らしいの、二人とも。そう、お母さんが言っていた。


 例えば……

 こんな快晴の日に?


 今日の教室の窓から見えるお空のように。そして少しばかり潮の香りのする、このような風の中で僕らは生まれた。時間差はあっても同じ日に、お母さんのお腹の中から出てきて産声を上げたそんな仲だ。今日のイベントも一緒に参加する……というよりも、僕ら二人が主役で、可奈は七夕らしい服装で来てほしいと言っていた。初の試みだそうだ。


 場所はここ。学園内。


 夜十九時より開催する……七夕まつり。その中に僕と梨花りかのお誕生日会も兼ねる。


 なんてたって天文部が主催する、年に一度のイベントだそうだ。どうやら可奈も初めて知ったそうで、それならと……急遽、僕らのお誕生日会を合わせたらしい。


 しかしながら真相は、


 可奈が僕らに、天文部のイベント参加をお願いしてきた。……あと、芸術部のメンバーも一緒に。葉月はづきちゃんのことを考えると、学園内で正解と思えた。


 でも今は、葉月ちゃんにも立派なナイトがいる。エッセイも拝見しているの、毎回お楽しみに。――その中で今、可奈自身にも気になる男子がいる……と噂ではなく、本人がマシンガントークの最中で、うっかり口を滑らしてしまった。僕は初耳だったけれど、違っていたの。梨花は初耳ではなく……知っていたの。もう一週間も前に。あの日の、梨花の「一人にしないで……」の寝言の意味は、そこにあったと思われたの。



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