第四九七回 柔軟な時間。


 ――所謂ソフトタイム。朝がまだ燻るお時間。僕の眠気は復活を遂げる。



 今日も……本当なら昨日の更新予定だったけれど、ようやく更新することができた。そこからの安心感。そっと、……そっとお部屋を、お隣のお部屋へと、その身を移した。


 ちゃんと涙の痕も消えてから。

 ちょっとは笑顔になれたから。


 そして潜り込む、ソフトな時間へと。柔らかなお布団の中へと。スヤスヤと……優しい寝息。梨花りかにも微かにまだ、涙の痕が残っている。それは僕への愛情。温かな……


 僕とは違う体温も。

 寄せる身。傍に眠ると心地よい鼓動。梨花の心臓の音……



 そして聞こえる、


「一人にしないで……」と、梨花の囁く声。寝言だけれども、ギュッと……「ずっとずっと一緒だよ」と、僕も囁く。寄せる頬まで。もう離れないという思いにまで達する。


 ……

 …………


 そして、僕らが起きたのは……


 ガーン! という効果音とともに午前の十時。同じベッドの上で梨花は僕を、僕は梨花を、じっと見ていた。すると同じタイミングで、息もピッタリにプッと笑った。


「ひっどい顔……」


「梨花もだね……」


「もう少し寝よっか?」


「うん、そうだね」


 と、いう具合に、僕らはまた一緒に眠る。この日は、夢現を繰り返しながら。


 七月の始まりに、僕らはお休みした。木曜日で平日。……一緒に二人きりで。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る