第四九六回 物思う時間。


 ――きっとそれは、りかのじかん。から始まった。



 グシッ……と涙が治まる頃、もう午前も四時。夜明けは近く、明けない夜はなし。


 雨音も、路面を濡らすだけ濡らしてから、静寂に還ってゆく。やがては朝の調べへと変えてゆき、そのままリアルな日常へ。なので、今まさに雨降って地固まるそんな頃。


 カーテンから、微かな日差しが漏れることを感じながら、

 温まるハートの中で、僕は執筆を始めた。泣き疲れて眠っていたから、PCも起動したまま放置な有様で、そのままキーボードを弾く。まずはロック画面の解除から……



 ワードを開くと、そこには、

 そこには昨日までのエッセイが、凛と綴られていた。


 整然と、僕の脳内に反映され……綴る、今日のエッセイを。僕の、今日のエッセイがあるのはね、――りかのじかん。その出会いがあったからなの。


 だから、梨花りかは僕の憧れで、

 そして、僕の一番の理解者。……もうそれ以上の言葉はいらなかった。


 あの時の、叩かれた時の痛み……その涙が、すべてを語っていたから。もっと梨花が大好きになったの。何だろう? 言葉では難しいのだけれど、心地よく温まるハート。


 そこから広がる世界観。


 また涙が溢れてきたの。


 それと比例して進む執筆。脳内から素直に流れ降りる言葉たち。ここ数日の間、中々出てこなかった言葉たちが今、僕とのハートのギアーが噛み合って、そう文章となる。


 わかるの。僕に笑顔が戻る瞬間。何かワクワクして、心躍る感覚。その感覚とは、久しぶりなような気がするの。涙はまた、ハートの曇りも流していたようだから。女の子が泣くのはハートのリフレッシュも兼ねているから、だから女の子は泣き虫なの。


 ……そうはいっても、他の女の子に訊いたわけではないから、僕だけかも。



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