第四九一回 帰り道も奥の細道!


 ――そして千佳ちかは、ピカピカになりました。すっかりリフレッシュなの。



 これも一葉いちようさんのおかげ。身も心も垢抜けして……別れ際はスーッと消えたから、少しばかりサーッとなったけど、もう芭蕉ばしょうさんで慣れっこになった。だから、笑顔なの。


 避暑地の定番、木漏れ日の中を軽快な足取り。


 緑の香り心地よく、鼻歌も奏でる。もちろんカントリーロード。マスクは今はしていない。周りに人はいないから。凡そ十メートルの間隔はあると思われたから。


 滅多に人通りのない場所……いやいやルート。


 或いは道程とも。けれども「千佳!」と声を掛けられた。背後からなの。だからといって決して、後ろ向きなんかではないの。向き直ってみれば、向かい合わせになるから。



「よおっ」


太郎たろう君も、この温泉へ?」


 と繋がる会話。お互い軽装。僕は青いショートパンツに大き目の黄色のTシャツ。飾るトートバッグ。太郎君はモスグリーンのTシャツに、黒の短パン。迷彩色なショルダーバッグ。……何だか似たようなスタイルで、履いているものも素足にスニーカーで、


「考えることは、同じだな」


「ホント。太郎君もリフレッシュ?」


「まあ、そんなところ。千佳もか?」


「うん。呼吸ピッタシだね」……「まったくだ」……こだまするの、弾む笑い声が。


 お腹の底から笑うって、こんな感じ?


 ……なら「今から、どうかな?」との誘いの声。手を繋ぐことが、その合図なの。


 そして向かう、太郎君のお家へ。……何をするかって、お勉強もそうだけれども、今日は℮スポーツの方。迫るウメチカ戦のための練習なのだ。それはそれは二人の呼吸を合わせる……というよりも、今の『呼吸ピッタシ』な感じを維持するための稽古だから。



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