第四九〇回 大自然と仲良くね!
――本当にその通りなら、もっと人類は、健康的な毎日を過ごしていたと思うの。
そして奥の細道の先には、広大なる風景。水のアンサンプルが奏でる調べ。
未だ梅雨ならではのケロリンの和やかな合唱も加わり、緑の香りが美しいクラシカルなミュージックを飾っていた。その中で僕は、飾らぬ衣装。……全裸となった。
身も心も全裸。
聖なる水を口にして、泉のような澄んだ水……お湯で身を清めてから。高湿度の小屋というのかミストサウナで芯から温まる。垢抜けと、ウイルスに負けないような身体にと。
そして
……あれれ? 洗ってくれるの。髪も一緒に……
誰かが僕の背後にいる。開放感が満載にも関わらず、僕の肌を触る感触……振り返るのなら、振り向くのなら、そこには女の人が。見覚えのある女の人。その人の、あまり笑顔を見たことはないけど、いつもは凛々しき顔だから。皆はどう思うかわからないけど、僕にはそう見えるの。喩えるなら『たけくらべ』……そして五千円札の人なの。
「
そう。一葉さんなの。
「千佳ちゃん、こんにちは。
と、初めてその声を、聞いたのだ。
きっと、今のところは、僕だけが知っている一葉さんの声。たけくらべは、一葉さんの代表作なの。偉大な小説家とコラボできるなんて、緊張もあるけれど……そこを通り越して歓喜の心。大自然の中で湯船に浸かるの、御一緒に。僕は中学生で十四歳。十五歳になる前に、出会うことができた。――その物語のヒロインと、今この時、同い年だから。
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