第四八三回 ありのままの思いを。


 ――そう、ありのままの僕を照らしている。全裸はだかの僕を照らしていた。


 お布団には誰も……


 太郎たろう君は今頃、自分のお家で未だ夢の中。さっきまでいた太郎君は、僕の記憶の中にある……夢の中での太郎君。或いは、少し未来の出来事を見ていたのかもしれないの。


 そう思考するにあたり、思春期の女の子の想い。また或いは、女の子は男の子よりもエッチなのかも……いずれにしても、少しでも、傍にいたいというそんな想いなの。


 でも、言葉にするには恥ずかしく、

 そこは察してほしい。――もう少し未来で、太郎君とその夢のこと実現するから。



 そしてその日の夕刻よりも少し前、

 つまりは今日の、金曜日の放課後。……芸術部の部員としての最後の一日を迎える僕と可奈かな。其々の道へ向かうラインへと立ったその時、……その瞬間のはずだった。


 少しばかりドライ感のある語りで、


千佳ちか先輩は……つまり学園枠以外のクラブ活動で、可奈先輩は天文部へとクラブを変えただけでしょ? 別に学園からお別れするわけじゃないし、いつでも会おうと思えば会えるしね。また集うのでしょ? この芸術棟に、今度は生徒会ジャッジメントとしてね」


 と、言い切る葉月はづきちゃん。今はちゃんと制服姿で……何というか威厳がある。だったら僕らはメソメソと泣いている場合じゃない。可奈とともに其々の道への門出を飾る。


「そうだね、葉月ちゃんの言う通りだね。僕らウメチカ・ファイブ。高等部になったら皆集まるから。太郎君もせつも……だから僕ら三人で準備を進めなきゃね」


 と、梨花りかは言う。この間の淳一堂での泣き顔とは全然別人のような、例えるなら向日葵のように逞しき笑顔で。僕と可奈の肩をポンと叩きながら。それからもう一人……


「俺がこいつ……あっ、梨花先輩のこと支えるから、可奈姉は大船に乗ったつもりで満喫しなよ、お星様の世界。それから可奈姉がお星様の名前つけるの楽しみにしてるからな」


 と、恵比寿えびす公太こうたは……ううん、公太君が芸術部の一員となったのだ。



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