第四八一回 御心はダンシング!


 ――それは可奈かなの申す「白状」という言葉に対して、梨花りかせつの心を示している。



 ざわめきが起こる僕の周りの風景。この日この時この時間に居合わせた人々……

 それはまた、この淳一堂で起きた初夏の出来事。


 そしてまた、僕はエッセイに綴り、メモリーに記してゆくの。描くものは些細な日々だけれど、その歩む日々は僕の変化への証。マイレボリューションの記録となるのだ。


 きっと、梨花もそうしてきたように、

 僕もそうしたいの。――弾む心はね、梨花に大いなる白状をさせた。


「ちょっと早いけど、サプライズを企んでたんだよ」


 と、梨花は言う。「話して大丈夫? 梨花」と、摂は梨花の顔を見る。「うん……来週の二十日にはわかっちゃうことだし。まあ、一足お先ということで……」



 ――あっ、初めて見る梨花の表情。


 それとも、……とても綺麗な表情。双子なのに、ドキッとしてしまう。


「今までありがと、可奈。

 可奈を送り出すのにね、やっぱりお星様の御本しか思いつかなくて、……って、やっぱりまだ早かったね、まだ、笑って送り出せそうになくて……」


 梨花の目に、溢れる涙。……そんなのされちゃ、僕も貰っちゃうじゃない。

 でも今はね、梨花には可奈しか見えてなくてね、


「……バカ。そんなに気を使うことないのに……

 私もダメね、梨花に感謝の言葉、照れくさくて言えないなんて……ホントごめん」


 という可奈も、溢れるどころか、零れていたの、涙が……


 そこから先は、言葉を要しなかった。もう誰もが察していたの、可奈が芸術部から旅立つ日を。そして僕もまた、太郎たろう君と一緒に旅立つ。其々の歩む道へ向けての。


 でもね、ウメチカ・ファイブは同じ。絆はここにあるのだから。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る