第四七四回 ……それでもまた、戦いは続く。


 ――勝負は着いたのだけれど、チャンプへの挑戦は終わらず始まったばかりなの。



 切って落とされる幕。


 思えば僕はチャンプ……チャンピオン。第一回・ウメチカ戦の。太郎たろう君とまた同じで二人でチャンピオンなの。ならば、この度の挑戦者も本来なら二人。


 車夫しゃふさんだけではなかったの。

 それはそれは、今日の別れ際。姿を見せたもう一人、車夫さんとのコンビの御方。


 ――作家の野口のぐちとし


 身長は見上げるように高いのが特徴。車夫さんよりも高く細身。長髪の四角い眼鏡。目もまた細く。……無表情な感じの人と思いきや、ふと優しそうな笑みを見せて、


「君が千佳ちかちゃんだね。ウメチカ、毎回楽しみに読ましてもらってるよ」と、嬉しい限りの御言葉で。作家と名乗るだけあって『書くと読む』の草創期からの作家さん。きっとそれだけではなく、もっと幅広く活躍されていて、書籍化もされている御方なの。


 だ、だからね……


「あ、ありがとうごさいます!」

 と、声まで裏返っちゃって、握手まで求めちゃて。


「そんなに緊張しなくても、君とはまた……いいや、君たちとか。君たちチャンピオンに挑む、僕らは挑戦者だから、立場的には同じだから、宜しくね、千佳ちゃん」

 と、優しく言ってくれた野口さん。


 車夫さんも「この子すごいんだよ」と、野口さんに告げる。



 ここはお家。僕のお家で玄関前……


 本当に別れ際だったのだ、車夫さんとの。そこに偶々居合わせた野口さん。……二人のお家は、京の都とこの千里の町を繋ぐ場所。天王山にあった。神足の町に住んでいる。


 ……そうなのだ。この次のウメチカ戦で、また会おうと約束を交わしたの。



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