第四七三回 其の三、肉を切らせて骨を断つ。


 ――考えるより行動! つまりはやったもの勝ちだ。



 なので、とことんまで切らせる。車夫しゃふさんの南十字星サザンクロス……ならぬ、南十字聖拳。正確には画面上でアバターが繰り出す技なのだけれど、僕のアバターのダメージも半端ない。


 削られるHP。……KOされるのも時間の問題なの。だけれど、ギリギリまで粘る。


 切り裂かれる衣服と、その下にある肌も。

 傷口からは、紅い血……痛々しくも。


 霞みゆく視界。ゲームでもリアルに再現されているの。それでもチャンスを窺うの。思うに勝負は一瞬で決まる。詰める間合い……徐々に。



 我が究極奥義まで、もう少しだから。


 僕のアバターはね、魔法少女だけにアイテムがあるの。つまりはスティック。……藪からスティックも技の一つだけれど、時としては鋭い剣になるの。フェンシングのような趣の剣に。車夫さんの得意な技はね、回し蹴り。それがアバターにもしっかり融合され、真空派を生む回し蹴りとなって、刃物のように鋭い切れ味となっている。


 繰り返される回し蹴りは、まるで旋風のように迫ってくる。……で、あるなら、どこにチャンスが? 回し蹴りと回し蹴りの間。コンマ何秒という世界を見極めて……



「今!」と、僕は叫ぶ。


 走る剣。――それは骨を断つ瞬間。ミミシ! と、独特な効果音がこだました。


 宙を舞う僕のアバターの上半身。胴体が切断され……それでも、下半身はしっかりと大地を踏んでいる。骨を断たれたのは僕の方という状況の最中だけれど、ミラクルは起きていた。それこそが僕の究極奥義。題してミラクル・ブレイド。華麗なまでに心の臓を射抜いていた。車夫さんのアバターの胸を貫いた、その剣の先は、背中まで貫通して輝いていた。絶命する車夫さんのアバター。僕のアバターは、勝利の微笑みを浮かばせた。



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