第四七一回 シャフにおまかせ!
――シェフではなく、シャフ……つまり車夫なの。今日、僕を訪ねに来られたの。
千佳という、僕の名前を知っているその男の人は、白いTシャツに青のジーパンという爽やか系な趣。スマート系かと思いきや、ガッチリ系……拳法を使いそうな感じだ。
胸には名札。……車夫と表記されている。僕は思う。回る頭で見えたものは、拳法を使いそうなイメージ。なので、思わす「シャオ……さん」と呼んでみた。
クスッと一瞬、笑ったような感じのシャオ……いや、「僕は車夫と書いてシャフと読みます」と言ったのだ。すると、脳の奥の方から湧き出すような感じの、記憶とよく似ているのだ。あの日のこと。三月九日の、学園をエスケイプした京の都での出来事……
「もしかして、車引きさん?」
「ピンポン!
って、プライバシー丸わかりの会員証。記載内容は……氏名、生年月日、住所に至るまで。そして、プロジェクト・ウメチカの会員ナンバー〇一五とまで。――ああっ、本当に危ないところだった。怪しい人なんてとんでもなく、この上なくご親切な人。
「あ、ありがとうございます!」
と、感謝の思いで溢れるその一言。両手で抱くように受け取った。
「今度は離しちゃダメだよ。悪用されちゃ大変だからね。……それから千佳ちゃんとお手合わせ願いたく、併せて訪ねさせて頂きました。突然で御免だけど、大丈夫いかな?」
と、車夫さんは言うのだ。
それって、もしかして……と思いつつ、
「あなた……車夫さんもウメチカ戦に出場するの?」と訊いてみた。
「してたよ。前回、第一回目に、君と対戦してね、今日はリベンジということかな」
驚きなの。去年の夏、第一回のウメチカ戦で対戦していたそうなの。……あっ、そういえば蘇る記憶。確か大学生のチームだ。人呼んでKO大学というチーム名のような……
「もち受けて立つよ、車夫さん」と、トキメク闘争心。僕はその挑戦を受け入れた。
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