第六十七章 六月は、君の旅立ちを飾る。

第四七〇回 そして六月は、まだ始まったばかり。


 ――緊急事態宣言の延長。それは、もう三回目。思えばもう、四月の終わりから繰り返されている。感染者は減ったけれど、重傷者は……深刻な問題。



 オリンピックは、まだ開催する方向。……しかしながら、まだ不透明だ。日本で開催するオリンピックは、実現するなら、僕にとっては生涯で巡り合わせることとなる。中止になったら、もう二度と巡り合わせることはないのだと思う。……東の都で行われたオリンピックの象徴であるゼロ系は、Nゲージとして、僕のお部屋を今日も走っている。



 六月二十日に緊急事態宣言は最終日を迎えるけれど、まだ六月は始まったばかり。僕と可奈かなはもう、其々の旅立ちに向けて準備や、そして心構えなどをしていた。……なので最終日を迎える前に、芸術部から旅立つこととなる。――立つ鳥跡を濁さずように。


 だけれど、学園にはいる。


 転校とか、遠くに行くわけでもなく、ウメチカ・ファイブとしては芸術棟の三階に集うこともある。「いつでも会えるんだよ」と、葉月はづきちゃんを宥めていた。僕や可奈に心配かけぬよう気丈に振る舞っていたそうだ。……と、梨花りかは語っていたの。


 葉月ちゃんらしいといえば、葉月ちゃんらしい。

 頑固なところも含めて、とても可愛い後輩なの。


 そして梨花は残る。……芸術部に。主に作る方。彫刻はしないのだけれど、粘土細工から入る。いずれはバンプラ部門も視野に入れているそうだ。


 高等部になれば、せつとデュオを組もうと目論んでいるの。二人で一緒に、リズミカルな『ものづくりの世界』を創り上げようとしている。その計画も……いや、プロジェクトも密かに、この六月から始めているそうだ。


 そして都築つづき怜央れお君は、キャンバスへと移る。……のだけれど、まだテーマや、それ以前に描くものを思案中だ。ここで驚くべきことを知ることとなった。葉月ちゃんが色々とアドバイスをしていたの。それも二人で……話し合っている場面を、僕は目撃した。



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