第四六〇回 想い出は繰り返すように、マカロニも……


 巡り巡ってまた。今は千佳ちかと一緒だけど、あの男も追いかけてきた。電車の中でも、そして感染予防のためのマスクも……鼻を出していて、その息遣いも荒くて、もう目と鼻の先で、周りに人がいることもお構いなく、もう目の前で壁ドンほどにも近づいていた。



「さっきはよくもやってくれたね、お嬢ちゃん。……でも、威勢がいいのも僕、大好きだよ。姉妹纏めて面倒見てあげるからね、最初はちょっと痛くて恥ずかしいかもしれないけどね、すぐに気持ちよくなるから、きっと夢中になれるから……」


 酒臭い。それも合わせて僕らには理解できないような臭い。千佳はもう涙目。僕も誘われそうで恐怖に……千佳と身を寄せ合う。周りには人がいるのに、見て見ぬふり……


「どうしちゃったのかな? 怖がらなくても大丈夫。次の駅で降りようね。僕の家がその辺りだから」って、もう顔近い。それに僕の手を握ってくる。そして、千佳が震えているのが伝わってくる。脳内で込み上がる何とも言えない事柄と、過去が蘇りそうな千佳のフラッシュバックも。千佳の息遣いも尋常ではなくパニックともいえるほどにまで……


「ほお、じゃあ大将の家で、この子たちに何をするのかな?」


「へっ?」と、その中年男は振り返る。僕らも見る。……誰なの? 男の人。最近では珍しいロングヘア―。それにパンタロンスーツ? 同じ中年でも、断然違うカッコよさ。背は高くスマートで、……あっ、そうそう、マカロニウエスタン。その様なスタイルで、


「さっきから見てたよ。お家じゃなく署で話を聞くから、この子たちとはここでサヨナラで、大将は僕と一緒に次の駅で降りてもらうからね。……ほら、暴れても無駄だから」


「お前は誰なんだよ?」


「僕かい? 庄野しょうのけん。皆からは『マカロニ・二世』と呼ばれてるんだ。大将ならわかるだろ? マカロニと呼ばれた伝説の刑事。その甥っ子さ。ほら、警察手帳。本物だから」


 ……ということで、あっという間に解決へと。


 ほぼ秒殺。大将と呼ばれるその男は、庄野……マカロニ・二世と一緒に次の駅で降りることとなった。「犯人確保の御協力ありがとう」という言葉を、僕らに残しながらも。



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