第四五九回 追いかけて、追いかけて、追いかけて……
雪国は僕らの故郷。越前の海が見える場所。……ある意味では、もしかしたら
少しばかり青褪める、血の気がサーッと引くのを覚える足元から。
……まさか。
そう思いながらも心宥める。とにかく歩く、それしかない。お家に帰っていることを期待しながら……或いは、帰路を歩んでいることを願いながら。
僕は思い、考える。
千佳は、どうして執筆を始めたのかを。きっとだけど、僕とは違った経路なのかもしれない。ということは、僕は思い上がっていた。千佳のことを、その執筆への思いを知ろうともしないで。僕は自分の考えを千佳に押し付けていただけだった。
千佳と会えたのなら、もっと尊重してあげよう。千佳の意見をもっともっと聞いてあげよう、僕はきっと独り善がりで、千佳の言いたいことを遮っていたのかもしれない。
――遠くへ行っていないこと、
それだけを願い、僕は歩んで、そしてホームに立つ。四駅から最寄りの駅へ向かうために。それこそが帰路だからなの。すると……聞こえる。そして見える。
「やだ! 離して!」と、悲鳴にも似た声が。
「怖がらなくても大丈夫だよ。おじさんと一緒にいい処へ行こうな」と野太い声も、コラボしながら。見える光景は……惨劇にも似た、千佳が襲われようとしている場面で、今まさに中年の男に手首を掴まれ、引っ張られ、連れて行かれようとしていた。信じられない光景だけど僕は、僕自身もビックリするような大きな声……それも怒鳴り声で、
「僕の妹に何してくれてるの!」
と、僕は鞄をぶつけるような要領で、リュックを男にぶつけた。すると男の手は千佳の手首から離れ……まさに男が怯んだ隙に、千佳の手を握って、そのまま猛ダッシュをしつつも、タイミングもよく、来た電車に乗り込んだ。もう離さない覚悟だったの。
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