第四三九回 そしてもう、金曜日で週末なの。


 ――今週は木金の二日だけ。でも何故か、一週間分に相当する充実感。


 なので、

 緊張……というよりも緊迫という単語が似合いそうな登校前からの、その一部始終。目覚めの朝は薄っすらと午前五時、脳内に広がるイメージが多種多様で、……それはまるで流星群のように過るイメージの、これからのシナリオや不安材料まで。


 お家が貧困だった頃の……


 いじめられていた頃の、学校へ登校する時のように。身の震えも、キリキリするお腹の痛みも、夢現な脳の動きまでも、思い出が繰り返されるように、リピートしながら。


 歯磨きすると、

 歯磨きするとね、久しぶりに少しだけれど吐いた。


 それでも一人ぼっちではなく、梨花りかと一緒だから、取り乱すことなく最寄りの駅で可奈かなと待ち合わせることができ、そのまま無事に電車に乗ることもできた。


千佳ちか、顔色悪いけど大丈夫?」

 と、可奈の声もあったけれど、


「大丈夫」と答える僕。……うんうんと頷く梨花。僕の意を梨花は理解してくれている。


 フラッシュバックも、以前よりかは軽くなった。


 少しずつ、少しずつだけれど、過去の流れに負けずに勝利を収めている。電車でのUターンもなくなっているの。勿論そこに至るまでの道程でも。過去は繰り返すものではなくて、未来へ向かう糧なのだから、もう後ろ向きな自分とは卒業なのだから。


 それにそれに学園内へ。教室に入ったらもう、

 思ったよりも普通なの。昨日の続きの光景が広がるのだから。


 だから可奈も、


「もうすっかり大丈夫みたいね」


 と言った。微笑みながら……勝利の微笑み。それは僕の笑み。咲き誇る咲き誇るの。延期になった緊急事態宣言にも負けないように、今日も一日、朗らかに歩むの。



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