第六十一章 ――新世界へ。

第四二一回 それは僕らの行く道、第三の道。


 ……対峙する僕ら。目の当たりには、こうちゃんという男子生徒。そして、跪いて俯いてもいる可奈かな。もしかしたら、あってはならない出会い、または再会だったのかも。



「君、名前は?」と、梨花りかは気丈にも。


恵比寿えびす公太こうた。お前は? いいや、お前らは? 可奈姉の何なの?」


 見た目……普通の男子生徒。中等部の一年生のようだ。胸のバッジが学年を示しているの。僕らにも同じようにバッジがあるけれど、この子から見たら、先輩の価値もないほどに憎んでいるようだ。……背は、やっぱり男の子で僕らよりも高い。


「梨花、星野ほしの梨花。そしてこの子は、双子の妹の千佳ちか。……君、先輩に対して『お前』はないんじゃない? それに君のやったことはね、千佳の心を傷つけたの。この子の姉としても君を許せないの、わかる? 謝んなさい! この子の前で土下座するの!」


「ちょ、ちょっと梨花、やりすぎだよ……」


「あんたは黙って! 千佳、こういうのは許しちゃダメなの。犯罪なんだから」


 梨花が本気で怒っている。

 ……僕でも手に負えないほどにまで。すると、するとね……



「梨花、この件は、やっぱり私がケジメつけなきゃね。ありがとね、それから、辛い思いをさせてごめんね。どうやら……私が原因のようだから」


 ――だから、少し二人だけで話させて。


 跪き俯いていた可奈が立ち上がった。……でも、もう二人だけの世界。可奈と恵比寿公太という男子生徒と。僕と梨花は小部屋のそのドアの向こうへ……退出した。


 梨花の瞳……少し潤んでいる。そうまでして、僕のことを思っていた。そして可奈の気持ちも察していると思えた。可奈が言い辛いと思えることを、梨花が代わりに心を鬼にして言い放ったのだと思えた。……本当に頑張ったよ、梨花。と、僕は胸中で。


 そして閉ざされたドアの傍、梨花と一緒に僕も、次なる出来事へと心する。



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