第三八一回 ……そうかもしれない。


 思えば思うほど……


 それは、とても単純なことで……何故だか、ふとそう思えた。涙の中、冷たい涙は積もりそうな白雪。純白な世界。そうなるといい。だから、思いっ切り泣いた方がいいと、


 ――瑞希みずき先生は言った。


 泣き止むまで待っているから……と、そうも言った。



 そして駆け付けてきた二人は「千佳ちか、大丈夫?」と、声も揃えも揃え、僕と瑞希先生だけではなく保健室の先生も……白いカーテンの向こうでは、怜央れお君が眠り続けている。


 僕が落ち着くのを見計らって病院に……

 連れてゆくつもりだ。怜央君をお車で運ぶ。瑞希先生が旦那さんに頼んだそうなの。


 それにしても……


「瑞希先生、今日はどうしたの?」と、僕が訊きたいことを梨花りかが、僕の代わりに訊いてくれた。続けて可奈かなも……この二人が駆け付けてきた二人。場所は新校舎の一階の、察しの通り保健室。保健室の先生も、察しの通り女性だった。


 ――白雪から小春へ。


 冬は必ず春となるように、このお外の雪も、春の訪れを知らせる道しるべとなる。


 小春こはるは、この保健室の先生のお名前だけど、

 それは普通にお名前。マスクが息苦しいのも。……なら、いじめられると悲しいとおもうことも。それがもし、お友達だとしても悲しいよね? 仲の良いお友達なら尚更。


 それとも君は、自分じゃないからいいと思うの?


 ……痛くないし、辛くないし……でも、すっきりしない。


 泣けるほど悲しいの。今の僕がそうだから。痛みと辛さがわかるから。……僕と同じように、怜央君も性的ないじめもされたようだ。わかってあげられないのは僕が女の子だから……男の子の痛みはわからないの。でも、死にたくなるほどの辛さだけはわかる。


 だから、僕と同じように君にも……青春を堪能させてあげたい。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る