第三七九回 ……麗らかな春の陽気。


 この日も、執筆を中心に進める予定だった。


 ゾロ目企画の三月三日まで、もう日が迫っているのだから……



 だから、可奈かなに許可をもらった。芸術棟の三階にある小部屋。そこに設置してあるPCを使うということを。勿論その目的も……僕なりには伝えたつもりだ。


 使うアプリはワードのみ。たまに音楽も必需品……なのでコッソリと、ユーチューブから流すつもりだったけれど、やっぱり手持ちのCD。なのでCDラジカセに装填した。


 それは白くて丸い形……

 そしてデスクの傍の棚にヒッソリと置かれてある。



 流れる曲は『カントリーロード』


 僕の大好きな曲なの。スマホの着メロにだってしているもの。そして……今まで語ったことはなかったのだけれど、エッセイでさえも。……小さい頃、お母さんが僕を寝かしつけるのに、そっと枕元で謡ってくれた大切な歌。大好き以上に大好きな歌だから……


 その思いも合わせて、

 僕は執筆する。少しばかりの未来の予想図を。


 今度こそ、我が家で『ひなまつり』をしたい。


 お母さんと一緒に……そっと枕元で交わした幼い頃の約束。あの頃のことが叶ってくるこのエッセイと共に。忘れてなんかいなかった。そっと胸に閉まってあったから。


 だから今は解放! 解き放つの。


 すると……大きな物音? 見渡せど、この小部屋には僕一人……


 今の思考には、心霊的な要素などは思いつかず、脳内にその発想の欠片もなく、感じる胸騒ぎだけが残り、それこそ開け放つの。この小部屋のドアを……


 そこに見える光景は、……そう光景は、倒れているの。怜央れお君が何も身に着けてない姿で、白い肌に無数の傷。……火傷の痕? 一体何されたの? と、僕は目の当たりに。



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