第三五七回 まずは、ほんわかと温泉マーク。


 ――「ハヒー」と奏でる二人のハーモニ。


 そして、二人の身体から立ち上る湯煙が、その温かさを物語っていた。



 湯船のお湯は、ご自慢の柚子湯。お祖母ちゃん特製のものだ。……と、お祖母ちゃんは言っていたの。効果の程は、確か、風邪の予防には良いらしい。



 ……結局は、

 梨花りかも一緒に入った。僕と一緒に……湯船にも浸かった。


「あの、風邪、大丈夫なの?」と、僕は訊く。顔色も窺う。


「ありがと。心配してくれてたんだね。……それからね、心配ないからね千佳ちか。思春期にはよくあることだと思うから。僕だって、ほら……千佳と同じだから」


 カーッと赤くなるのを感じる。僕のお顔。


 お風呂はね、一緒に入ることが多いから。洗いっこもしているし、見慣れているはずなのに……あの、お互いの、裸体というのか、裸というのか……


 でも、やっぱり恥ずかしくて。さっきの、梨花に見られたあの場面は……


「千佳も、ちょっと風邪みたいね」

 ……って、梨花の顔近っ。額に手を当てるの、僕の額に。


 そして「熱計ってみた? 明日は学校お休みした方がいいみたいね。僕もまだ一日は様子を見るようにって言われてるし。なら、すぐパジャマ着て、さっさとお布団入りピットインだよ」

 と言いながら、手を引っ張る。


 引っ張るのは梨花で、引っ張られるのは僕……すると、来られたの。


 太郎たろう君。生徒会の仲間たちをも率いて。せっちゃんを始め、本日初めて『画面上で』お会いした面々。お名前、まだ覚えていなかったね……と思っていると、「ぼちぼちでいいと思うよ。暫くは画面上でしか会えないから」と、開き起動するPC。生徒会という名の優しき面々の人たちは、沢山のキーワードをもって、お見舞いをしてくれた。



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