第三五六回 気付けばもう、節分も近い月末。


 ――節分といえば豆撒き。『鬼は外、福は家だ』



 その日は近し、今日はもう月末。……正確なれば、月末は週末だから。今日は平日なので、一月の二十九日と仮定される。この週末は締め切り。コンテスト応募の締め切り。


 やっぱりエッセイは楽し。


 ついさっき帰って来たばかりだけれど、颯爽さっそうたる執筆。この後、来られるの。スマホに連絡があった。SNSで……太郎君から。学園初のオンライン会議……のはずだったけれど、太郎たろう君のオンライン惚気のろけになってしまって、それで僕がお顔まっ赤っかにしちゃったから、せっちゃんが心配して太郎君までも。可奈かなに、お家の玄関まで送ってもらって、可奈には遠回りなのに。お忙しいのに……。



 そして梨花りかはというと、お休みしたの。今日の学校。


 自分のお部屋で、大人しく眠っている。より一層厳しくなった緊急事態宣言の最中、心配は深々と募っていたけれど、大事には至らず普通の風邪で、安堵の域を着いていた。


 でも、「温まりなさい」と、

 お祖母ちゃんが、お風呂を沸かしてくれた。


 確かに寒かった。寒気がしたのも否めない。……そして脱衣所の鏡の前。やっぱり僕のお顔は赤くて、気にしていた幼児体系だったけれど、何か膨らんできたの。それに丸みも帯びて……少しずつだけれど、女性の体。少女から大人のアンバランスな中間地点で。


 触れながら、撫でながら、

 見ていると、見ていると……


千佳ちか、な、何やってるの、裸で」


 と、いつの間にか梨花が、背後から見ていた。


「わわっ、な、何でもない。お風呂に入るから」


 へえー、というような表情の梨花。ギクッという表現がピッタリな僕だ。



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