第三三九回 そして、ソフトタイム。


 ――ハードではなくて、あくまでソフトに。



 黄色のカーテン並びに、そのイメージたるお部屋。今、二人そこにいる。


 それは暖かで、また温かな……


 笑顔が弾む緩やかな時間で……お勉強をしていても、一緒にいるだけで楽しい。それはセーターのように柔らかく、お茶のような深い味わい。心地よい、心地よい……


 なぜ急にお勉強なのか?


 りかの宿題に触発されただけではなく、受験に備えて……この冬、三学期が終わったのなら、僕らは中学の三年生。僕は梨花りか可奈かなと同じで、中等部から高等部へ進学する。


 ――ここ、私立大和中学・高等学園の内で。



 だからなの。そうであるから、太郎たろう君は僕にお願いした。


 勉強みてほしいと……


 そして僕は問う。見るだけでいいの? と。なら、僕も教えてほしいことがある。


「――ジャッジメントについて」


 それは……唐突な質問だった。一瞬ドン引き? いやいや、ちょっぴり固まった太郎君だけれど、すぐさま和みの表情に変化して、僕の髪をクシャッ……と撫でてくれた。


 その様な話題にあっても、

 まるでオレンジのような、仄かな香り漂うマイナスイオンのような不陰気をもって、


「それなら今、千佳ちかのやっていることだよ。


 安全を確保することは勿論、自分だけではなく人のことも思うこと。……自他ともに幸福を願う。――ってな。まあ、瑞希みずき先生が一番最初に俺に言った言葉なんだけど」


 と、その言葉の直後、

 パッと広がる世界観。瑞希先生も、やはり只者ではなかったの。――だから、


「一緒に頑張がんばだよ、太郎君。勝ち取ろ、高校受験」と、僕はもう必勝モードだ。



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