第五十二章 それは、ちかのお勉強。

第三三八回 そして、二人でお勉強。


 ――梨花りかが宿題なら、僕はお勉強だ。でも、僕だけではないかも。



 すると鳴り響く!

 そしてこだまする玄関のベル。或いはチャイムとでもいうべきか。……とにかく出る。


 お母さんでも、お祖母ちゃんでもなく、またはママでもなく、僕自身が開ける、玄関のドアを。茶色のドア……軽快に開く。インターフォンは備え付けだけれども、わかるの。


太郎たろう君、いらっしゃい」


「おおっ、いつになく元気だな、千佳ちか


 何か燥ぐそんな心境で、ふと思った。


 新年の御挨拶を済ましてから、もう九日目。えっと、太郎君とは三箇日の最終日だったから……指折り指折りで「七日目。だろ」と、僕より先に答えを導き出した太郎君。



「何でわかったの?」


 それは『七日目』のことを指したのではなく、声に出してないはずの僕の言葉た

ち。つまり、多分、以前もあったと思うけれど、ねえ、僕の思っていることがわかるの?


「わかるよ。千佳はよく顔に出るから……」


 そ、そうなの? 急に顔が火照る。きっと、いっぱい見られている。


「まあ、それを知ってるのは多分、俺だけだし……あっ、梨花お姉もか。ところで梨花お姉って今いるかな? お借りしてたドライバーを、お返ししたいのだが」


 何故か急に『お』を付ける太郎君。……ちょっとちょっと、どうして梨花には『お姉』と付けて、丁寧な言葉になるの? 梨花はお姉ちゃんだけれど、僕と同い年だし……


 タメなんだよ。


「……千佳、そんなに顔を赤くして膨れなくても、千佳だからなんだよ。……そのな、俺との距離が近い奴って。くっつくぐらいの距離かな、喩えるなら……」


 と、言いながら太郎君は、ほんのり顔が赤くなっていた。



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