第三三七回 見守る。だからこその距離。


 それは、ティムさんが決めたこと。


 それは、僕との距離。……僕とティムさんが出会った頃の距離感を保つ。



 親子よりは遠く、お友達よりも近くて、

 親友と呼ぶには、微妙な距離だけれど、とても心地の良い距離。


 例えるなら学園と、ここ西原にしはら邸の距離。そして今は同じテーブルに横並び。梨花りか可奈かなとの距離は平等。……向かい合わせに座るティムさんまでの距離。


 ティムさんにとって、

 僕も梨花も可奈も……三人とも平等にお友達。


 ティムさんは語る。しかしながら僕らは子供で、まだ大人なお話は理解できるかどうかは怪しいけれど、聞くの。それでもしかと聞く、ティムさんの語ることを。


 ――西原財閥は、守る。


 何を? そう、学園を。だからこそ継いだの。理事長の座……


 あの夏、僕と出会って……


 出会ってから、僕を見てきて……結論に至ったそうなの。僕の知らない所で、僕らのことを見ていたの。これからは親としてではなく、親しいお友達として見る。


 時々、学園に来てくれるの。


 僕は約束した。……その時は、僕が学園を案内してあげるということを。ティムさんには、僕ら生徒の視点からも見てほしいから。他の先生にはないような視点。


 僕も、太郎たろう君のように学園を守る側……

 ジャッジメントのできる人になりたいから。その思いを込めつつ、そう約束した。


「また、いつでも遊びにおいで」


 と、夕映え輝く時刻、ティムさんは言う。和やかな笑顔を残して。僕の脳裏に残る。これからも一緒だ。距離感も……グッと近くなったような、そんな気がした。


 今度こそ本当の帰路だ。僕と梨花、可奈も一緒に歩む、其々の帰路へと。



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