第三〇五回 それは、祝・パパと僕の門出。


『――確かに大人の身勝手な都合かもしれないけど、

 人にはそれぞれの道があるんだよ。僕には僕の道、千佳ちかには千佳の道がね』



 そう、景色見下ろす観覧車の中で、

 そう、ティムパパは言った。僕は、とうとう泣いちゃった。


 家族になったから……ティムパパとは家族だから、

 ……別れが存在するなんて思いもしなかったから、


「……酷いよ」と、僕はもう大泣き。


「本当に、酷いパパだよな。……でも、千佳はもう大丈夫だ。新一しんいちさんが大切にしてくれる。……本当のパパがいるから。血の繋がったパパが……新一さんはわかってくれたよ」


『――千佳が、大切な娘だって』


 ティムパパは、僕の髪を撫でながら優しくも、そう力強く言った。



「でも何でなの? 何でティムパパは、パパのままじゃダメなの?

 ヤダ……千佳ね、もっといい子にするから、そんな悲しいこと言わないで……ねえ」


 僕は、ティムパパの胸に顔を埋めた。


「ごめん……千佳、

 どうしてもなんだ。僕に大切な人が……愛する人ができたんだ。僕は、千尋さんがいながら、千佳もいながら……その人と恋に落ちてしまってた最低なパパだ。そして、その人の中に……僕と彼女の子供ができたんだ。だから、だから許してほしい」


 詫びる……ティムパパ。詫びる……僕に?

 そんなの、……そんなの、


『――許さない!』と、涙にぬれた顔でもキッと睨む、睨んだティムパパを。


「千佳? ……そうだよな、謝って許されることじゃ……」


「そうだよ。その人と、生まれてくる子を大切にしないと、絶対に許さないんだから」



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