第三〇四回 それは、祝・もう一つの門出。


 ――僕らの物語は、エッセイで始まった。



 梨花りかのエッセイと僕のエッセイ、何故この二つの物語は別々となったのだろう?


 答えとも、理由とも……それは存在する。

 それはね、テーマの違いにある。僕は、梨花と同じ物語を綴ることはできない。



 りかのじかん。

 ――は、梨花にしか描けない作品。テーマは『お友達』


 新章たるウメチカ!

 ――は、僕だけが描ける作品。そのテーマは『家族』……僕がティムパパと出会って始まった物語。そして今日、学園まで僕を迎えに来てくれたティムパパ。それからは青春ものらしく、夕陽に向かって走る。ドライブを兼ねたテラスの午後三時を満喫するため。


 見えるお空の色は、白かった……


 白く広がる世界は、僕らにホワイトクリスマスを感じさせる。その当日は、もう少し先なのだけれど、ティムパパは僕にお話があるという……僕だけ。そこには梨花も、お母さんもいないの。ティムパパと僕、二人だけで遊園地……そして、観覧車だ。


「お話って?」


千佳ちか、今までありがとう」……と、ティムパパ。深刻そうな、その表情。


「えっ、どうしたの? 何で『今までありがとう』なの? それじゃまるで……」


「ああ、そのまるで……」


 意味を察する。それは、


「パパ辞めちゃうの? 僕が悪い子だから?」……そうだね、確かに出会ったばかりの頃は、良い子と無縁の子。ティムパパを唆して、チケットを高額で売っていた子だから。


「千佳は悪い子じゃないよ、とっても良い子。でも、これは僕の問題だから……」


「どうして? せっかく皆揃って五番町に暮らせるんだよ?」と、泣きそうになった。



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