第二八六回 ――親公認。浪漫な一夜。


 翌日も平日。もちろん僕らは学校も、大人はお仕事もある。


 でも、朝帰りは必至。それでも僕は、……外泊を決行する。


 無断という二文字は付かずに、梨花りか可奈かなも見届けた上で、僕らのことを。僕の爆弾発言も耳にしている。お泊りするお家は、同性のお家ではなく異性のお家……


 つまり男の子のお家。同じお部屋で。


 中学生なら、もう大人。男女の意識は芽生えている。……でも、僕は子供。十四歳だけれども、もっとピュアな理由。小さな頃の記憶に……ないの。


 パパにおんぶしてもらったこと。抱っこも。

 パパと一緒にお風呂に入ったことも。同じお布団で、パパと一緒に寝たことも。


 さっきまで……さっき、

 太郎たろう君におんぶしてもらってね、……そう思ったの。パパの背中って、


 こんな感じなの? って。だったらティムパパでも、尚更、新一しんいちパパの方が近いものがあると思うのだけれども、どうしてか太郎君の背中で……そう思ったの。



 ――するとね、親公認。

 お母さんが、今日のお泊りを許してくれた。


 嘘はつかず、ちゃんと太郎君のお家にお泊りすると、正直に、ありのままを告げた。


 太郎君のお母さんも、


「もちろんウェルカムよ、千佳ちかちゃん」とパワフルに、腕に縒りを掛けてカレーを振る舞う。お泊りの定番といえばカレーライス……あっ、それってキャンプだったかも。


 また夏が訪れたら、


 ……そうね、葉月の月がいい。皆でキャンプも楽しいかな。そう思っていると、


「いい顔してるな、千佳」と、太郎君は満面な笑顔で言った。


「うん。食べ終わってゲームしたら、一緒に入ろうねお風呂」と、僕は言ったの。


 笑顔あふれる食卓。一つのテーブル囲んで、楽しき一夜の始まりを告げたのだ。



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