第二八五回 ――夢? 夢ではないの。
それは、今日の出来事。……ユサユサと揺れる、揺り籠のよう、喩えるなら。
それは、それはそれは、広く大きな背中……
小さい頃に夢見た、おんぶ。パパの背中……
って、
「おっ、お目覚めのようだな」
「えっ、僕どうしたの?」と、辺りもキョロキョロ……あらら、見慣れた景色の一つ。
私鉄沿線から、もうすでに最寄りの駅の付近をポツポツとね、歩んでいるの。
「眠ってたよ、気持ちよさそうに」
と、
「大丈夫、梨花みたいに大きな鼾で、パンツ丸見えじゃなかったから」
と、
「でしょ、持つべきものは姉思いの可愛い妹だね」
「日頃の行いから、あなたが千佳に圧力かけて言わしてるんでしょ、梨花」
まあ、そんなやり取りが、梨花と可奈の間で繰り返されるけれど、徐々に僕の耳から遠ざかる、太郎君も一緒に……だから、もう二人の世界。
「ねえ、太郎君……」
「ん? どうした、千佳?」
そしてギュッと、身を寄せる。胸と背中が……「今晩ね、一緒にいてくれる? お泊りしたいの、太郎君のお家に」と、僕は言っていた。抑えられない気持ち、それ故に……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます