第二五二回 夕陽の中へ。……そして僕は、朝に広がる白い世界へ。


 そこは、本当に眩き世界。


 或いは、淡くぼんやりと、朧気な世界?

 君なら、どう思う? どう見えるかな?



 ……例えばね、もう昨日の出来事かな? 芸術棟に集結したの、みんな。フィフティーン……そこには十五人いた。……そう。延べだけれど十五人いた。


 今一度、指折り数えるの。


 僕と梨花りか可奈かな太郎たろう君と瑞希みずき先生。令子れいこ先生と葉月はづきちゃん。軽音部の四人……と、陰ながらだけれどね、大塚おおつか君や、大悟だいご君、小林こばやしさんも来てくれた。かつては僕らと同じ舞台で活躍したメンバー。去年のイベントの、演劇部で共に活動したメンバーだ。



 でも、よく数えてみて、


 ……察しの通りだから。



 夕陽の中へと、「さようなら」と手を振り帰ってゆく。それは様々な、それぞれの道程へと歩んでゆく。それぞれの役割を果たしながらも、その日一日を綴るのだ。


 二度と戻らぬ、

 帰らざるその日、その一日。


 今生の命は、一度だけなの。


 千佳ちかという、その名前はね、今生だけのもの。


 来世ではね、違う名前でね、きっと……



 思えばもう、悔いは残っていなかった。


 星野ほしの千佳が、梅田うめだ千佳へと名を変えて、同じ今生の道を歩んできた。


 この白く広がる世界に至る今も、その向こうに至っても、ずっと……



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