第二五一回 迷彩の密林地帯? 森林浴なイメージなだけに。


 ――意味不明のサブタイトルだけれど、僕にはそのように見えたの。



 その思想を理解できるのは、きっと梨花りかだけだと思う。


 それはジオラマ。この度の作品は、そうなの。明日よりまた着手する、ここ芸術棟の一階に於いて……なぜならば一階そのものが、僕らの作品だから。本当に、大ジオラマだ。



 そこで蠢くもの。


 ものは、者なの。動いている疎らな迷彩色。それはアクリル絵の具が付着したもの。素肌に直接。大きな……百号のキャンバスの前、迷彩色となった二人は、


 何と全裸で……付着するアクリル絵の具が、着飾るものとなるのだ。


 それが絵を描く時のスタイルという令子れいこ先生は兎も角……何と、何とだよ、葉月はづきちゃんまでそうなの。車椅子から安全な椅子に乗り換えて……それは病院で、入浴の際に使われるものと同じものだそうだ。転ばないように考えられている。それもそうだけれど、しっかりと、僕らのお休みの間に、令子先生のスタイルを習得したようだ。


 というわけで、


 僕らはしっかりと見た……ということになる。だから一緒に行動してきた太郎たろう君を、ここで食い止めることとなったのだ。従って一階のこのお部屋……或いはルーム。轆轤の回せるこの場所だけは、僕と梨花と可奈かな……あと、瑞希みずき先生まではOK。入室は。



 ――でもでも、もうそれはお構いなし。


 僕と梨花がモデルとなった『天使のうたたね』はね、


 百号のキャンバスに存在感満載の、着々と色付いている。それを描く令子先生と葉月ちゃん、二人ともこの上ない程に楽しそうで、青春の一ページを語るのならば、それらも立派な芸術作品と言えるだろう。だから少なくとも、僕は描きたいエッセイで。


 明日からはまた、僕らも一階で……令子先生と、そして葉月ちゃんの傍らで。



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